2024年の締めくくりとして、2024年版中小企業白書を取り上げます。その中でも、DXに注目して見ていきましょう。DXの現状や効果、課題といった現状を確認し、2025年の抱負をまとめる参考にしていただけますと幸いです。
DXに取り組む重要性が確認された2024年
2024年は、DXに取り組む重要性が再確認された年だといえるでしょう。コロナ禍を経て経済が回復し、売上高の増加が数字となって表れました。その一方で、更なる売り上げの増加や規模拡大への対応が難しくなっているとされています。深刻な人材不足に見舞われている中小企業にとって、人手不足の解消は急務です。
少子高齢化による生産年齢人口の減少は今後も続くことが見込まれているため、現在の事業でいかに業務効率化や省力化を推進できるかが、DXのポイントといえるでしょう。規模の小さい企業ほど省力化に取り組めていないというデータもあり、人手不足解消や売上高増加が期待できるDXに取り組む意味は大きいとしています。
また、原材料や物価などの高騰を受け、価格転嫁や価格改定をどこまで実施できるかも、生産性を向上させるには不可欠な要素だとされています。価格転嫁を補う方法として受注数量の増加(薄利多売)がありますが、それには限界があるため、今後は単価アップに向けて付加価値を高める活動が重要だとも伝えています。
世界から見ると日本の労働生産性は低めで、国内でも生産性には格差があると中小企業白書は指摘します。企業規模によって生産性に差があり、内部留保がある大企業は生産性が高い一方で、規模が小さくなるほど生産性が低くなるという関係にあるのも事実です。
そのような中でも、今後の成長を見据えて、中小企業の投資意欲は高いという指摘もあります。成長する中小企業には、人材育成をはじめとする人への投資や設備投資、研究開発投資、M&Aといった投資行動が見られ、売上高や利益、生産性が高いという結果も報告されました。
DXが担う役割
投資対象のひとつに挙がっている人とは、研修などの人材育成を指します。人に投資してスキルアップを図り、業務効率化や省力化を実現して生産性向上につなげる役割を担っているのがDXだといえます。
では、それがどこまで進んでいるのか、実際にほかの企業はどのような取り組みをしているのか、どのような課題に直面しているのか、DXが本来果たす役割は何かといったことを、2024年版中小企業白書で確認していきましょう。
この5年で進展したDXへの取り組み
2024年版の白書では、コロナ禍前の2019年からのデータを用いて、この5年間の推移を示しています。DXへの取り組みは年々進んでいるものの、いまだ途上段階にあるとしています。
4つの取組段階
取り組み状況の詳細に入る前に、4つの取組段階を押さえておきましょう。この取組段階の違いによって、得られる効果や課題も変わってくるためです。
段階1はデジタル化が図られていないアナログな状態で、DX未着手といえます。段階2はデジタルツールを導入している状態で、電子化を進めている段階です。段階3はデジタルツールの導入後に業務効率化をしている状態といえます。そして段階4は、導入したデジタルツールでビジネスモデルの革新や競争力強化といった活動をしている状態です。
自社のDXがどの段階にあるかをご確認の上、ぜひこの先を読み進めてください。
DXの取り組み進捗
2019年からの5年間で、DXの取組段階は確実に上がっています。段階1(未着手)が61.3%だったのに対し、2024年では30.8%と半減しているだけではなく、段階2(電子化)は9.5%から26.9%へと推移し、約3倍に達しています。
段階3(業務効率化)には大きな進捗がないように見えるものの、7.9%の上昇です。段階4(DX活用中)は、全体に占める割合こそ高くはありませんが、1.7%から6.9%と約4倍になっています。
取り組み内容
取り組み内容は、取組段階によって差が生じていると白書で指摘されています。差が表れるのは段階2以下と段階3以上で、特に「顧客データの一元管理・データ利活用」や「営業活動のオンライン化」ができているかどうかという部分にあるとしています。
電子化やペーパーレス化、自社ホームページの作成は、段階に関わらず多くの企業で取り組んでいることから、新システム導入による業務の電子化や自社ホームページの作成から一歩先に進むことが、自社の独自性を高めると示唆しているといえるでしょう。
DXを推進している部署や部門
DX推進の旗振り役を担っているのは、経営者を含む経営部門という回答がもっとも多くなっています。次いで、総務や人事、経理といったバックオフィス部門、IT部門などDXの専門部署です。
ポイントとして述べられているのは、担当者や担当部署を決めている企業のほうが、そうでない企業よりも取り組みが進んでいるという点です。自社ではなかなかDXが捗らないという場合には、推進担当を決めると良いと推奨しています。
DXに取り組むようになったきっかけ
DXに取り組むようになったのには、きっかけがあるはずです。どのようなことが多かったのか見てみましょう。
実は、社内からの要望がもっとも多い回答です。取引先からの要請や競合他社の取り組み状況を見てという回答が続きます。旗振り役は経営者を含む経営部門が多いことから、周囲から言われて取り組むパターンが多いという現状あるといえるでしょう。
実はここでもDXの取組段階による差があります。取組段階3や4の企業ほど、競合他社の取り組み状況に加えて、セミナーや書籍で得た情報をきっかけとしている割合が高く、そういった企業ほど取り組みが進んでいる傾向にあるとしています。
DXを自分事として捉えている企業ほど、情報収集に積極的であり、それが取り組み進捗にも表れているというのは頷ける話です。
DXに取り組むと期待できる効果
ここでは、DXに取り組むことで期待できる効果を確認していきましょう。費用や人材で厳しいという中小企業や小規模企業も少なくないでしょうから、どのような利点があるのかをあらかじめ知っておくことは重要です。DXが投資の対象にふさわしいかを判断する基準になるでしょう。
白書では、次のような回答があります。
- 業務効率化による負担軽減(44.5%)
- 人件費等のコスト削減(30.3%)
- 業務プロセスの改善(30.0%)
- 人手不足の解消(26.4%)
- データに基づく意思決定(14.2%)
ここに挙げた回答を売上高に対する影響度別でまとめたのが、下記の図です。DXの取り組みが売上高にプラスに作用していると回答している企業ほど、「既存製品・サービスの価値向上」や「多様な働き方の実現」「ビジネスモデルの変革」「顧客接点の強化」「新製品・サービスの創出」といった、本来DXが担う高付加価値化に対してポジティブな回答をしています。
つまり、DXの取組段階が低いうちは業務効率化やコスト削減といった効果を、DXの取組段階が高まるにつれて既存製品やサービスの価値向上といった付加価値の高い活動を期待できるといえるでしょう。
DXに取り組む上での課題と求める支援
多くの企業が感じているDXの課題と求める支援を見ていきましょう。
DXを推進する際の課題
多くの企業が感じている課題とは、「費用負担」と「人材不足」の2つです。取組段階2(電子化)以上の企業でもっとも多くなっています。
それに続くのは、「具体的な効果や成果が見えない」「DXに取り組む時間がない」「経営者や従業員の意識・理解が足りない」です。段階2(電子化)や段階3(業務効率化)での回答率が比較的高く、段階4(DX活用中)では回答が少ないことも特徴といえます。DXが社内に浸透するにつれて、理解が深まるということでしょう。
「どのように推進すればよいか分からない」「どこに相談すればよいか分からない」という回答も、DXの初期にあたる段階2や推進中の段階3に多く見られます。
DX推進に必要な支援
DX推進に当たって求める支援は、課題と呼応する形になっています。求められているのは、「補助金・助成金」「情報提供」「研修・人材育成」といった支援です。
課題に挙がっている「費用負担」と「人材不足」に加えて、「具体的な効果や課題が見えない」や「経営者や従業員の意識・理解が足りない」に応えるような格好で「情報提供」や「セミナー・シンポジウム」が挙がっています。
「専門家派遣」「相談窓口」といった支援策も求められていて、取組段階が上がるほどその割合が増えています。DXにはこれという絶対的な正解はありません。自社の業界や商品・サービスの特徴、ビジネスモデル、予算、人員などに応じて最適解を見つけていくという活動を続けていくことになります。そこで、専門家や相談窓口といった伴奏型の支援が欠かせないということになるのでしょう。
売上高増加や高利益を出す中小企業がしていること
ここまでDXを中心に中小企業白書を見てきました。中小企業が実際にどのような取り組みをしているのかお分かりいただけたことでしょう。ここで、もうひとつ興味深い指摘をご紹介しましょう。
それは、成長のための投資行動をした企業ほど売上高が増加し、支援機関を利用する中小企業ほど利益が高いというものです。
成長のための積極的な投資
DX推進に必要な人材が不足していることは、課題のところで触れました。人への投資とは、研修や人材育成を意味します。DXには、システムやツールを用いた電子化・デジタル化はもちろんのこと、そのようなシステムやツールを使いこなせる人材も欠かせません。
冒頭でお伝えしたとおり、投資対象には人だけではなくシステムを含む設備投資や研究開発、M&Aなどがあります。しかし、深刻な人手不足に直面している中小企業にとって、業務効率化やコスト削減、人手不足の解消につながるDXは、有力な選択肢のひとつだといえるでしょう。
支援機関とは、商工会や商工会議所、金融機関、中小企業診断士、コンサルタントといった経営支援機関を指します。支援機関を利用している企業のほうが、そうでない企業よりも約10%黒字率が高いというデータが示されています。
DXを加速させるデジタルマーケティング
一口にDXといっても、従業員に何を学ばせたらいいかわからないという場合には、デジタルマーケティングの習得をおすすめします。DXの取り組み内容のところで取り上げた「顧客データの一元管理・データ利活用」や「営業活動のオンライン化」へ進むのに効果的だからです。
デジタルマーケティングでは、デジタルマーケティングの基礎はもちろんのこと、デジタルツールの使い方やデータ分析、アクセス解析、Web広告といったデータ経営に不可欠な内容を幅広く学習できます。もちろん、スポット的にひとつの内容を深堀りすることも可能です。
多くの企業で業務の電子化や自社ホームーページの作成は済んでいるという指摘が中小企業白書内にありました。そこから「顧客データの一元管理・データ利活用」や「営業活動のオンライン化」へ進むハードルが高いとされていましたので、そこを越えれば自社にとってのメリットが一段と大きくなるといえます。
人材育成は人材定着や離職率低下も期待できる
人材育成には、人材定着や離職率低下という効果も期待できます。中小企業にとっての重要な課題のひとつである「人材」を確保するためには、職場環境の整備が欠かせないと中小企業白書は指摘します。
職場環境の整備には、物理的な空間や設備、勤務条件の改善などもありますが、人材育成もその中に含まれます。人材育成に取り組んだ企業では、人材定着だけでなく生産性も向上したというデータもあります。
DXだけではなく人材確保にも効果的なデジタルマーケティング研修を、この機会にぜひご検討ください。費用の面で課題があるようでしたら、リスキリング支援コースといった助成金活用と合わせてご案内します。
助成金活用
https://www.icloud.co.jp/josei/career.html
デジタルマーケティング総合研修(4月開講)
https://idigi.jp/webmarketing/wm-general/
2025年新入社員研修
https://www.icloud.co.jp/shinjinkenshu/index.html
まとめ
2024年版中小企業白書では、DXの現状や取り組み内容、課題などの報告を通して、その重要性が再確認されたといえるでしょう。コロナ禍を含むこの5年間で、DXの取り組みは確実に進展し、取組段階による効果の差も見受けられました。
人手不足という難題に直面している中小企業こそ、DXに真摯に取り組み、生産性をもっと上げていく必要があるのではないでしょうか。デジタルマーケティングは、業務効率化や人手不足の解消だけではなく、社内にデータ経営を根づかせる足掛かりとして最適だと弊社は考えます。
平常を取り戻し、これから先のことを本格的に考えなければならない今だからこそ、ぜひご検討ください。DXを推進しましょう。お問い合わせをお待ちしております。