教育ニュースフィードでこれまで何度かGoogleアナリティクス4プロパティ(以下、GA4)を取り上げてきました。今回は、現行GA(以下、Googleアナリティクスまたは旧GA)のサポート期限が発表されたことにともない決断を迫られている現状や、GA4がリリースされた理由、以前よりも明らかになってきた旧GAとの違い、GA4に切り替える前に整えておきたい準備などについてお伝えします。
いよいよ明確になった旧GAのサポート期限
Googleは、2023年7月1日をもってGoogleアナリティクスのサポートを停止すると、2022年3月16日に発表しました。このことは、旧GAによるデータ計測停止までのカウントダウンが始まったことを意味します。その日まで約1年、準備期間として十分かどうかは各企業によって考え方が異なるでしょう。
ここでGoogleアナリティクスのサポート停止までの流れを一旦確認しておきましょう。Googleアナリティクスのデータ計測終了まで約1年です。
- 2020年10月14日 Googleアナリティクス4プロパティのリリース
- 2022年3月16日 Googleアナリティクスのサポート期限発表
- 2023年7月1日 Googleアナリティクスのサポート期限
- 2023年10月1日 Googleアナリティクス360(有償版)のサポート期限
- 2023年1月1日以降 Googleアナリティクスのデータ閲覧期限
旧GAのデータはGA4に移行することができません。このことから、旧GAでデータ計測を終わりにするか、GA4を導入するかの2択を迫られている現状だといえます。GA4は、旧GAとはかなり違うといえますので、現在旧GAを導入している企業は、大きな選択を迫られている格好です。
GA4がリリースされた理由
そもそも、GA4がリリースされた理由を振り返ってみましょう。そこには理由があるはずです。旧GAがリリースされたのは2005年、これまでに数々のアップデートを重ねてきました。それでも、ユーザー行動の変化に追いつかなくなったことが理由だといえます。
2005年といえば、もう15年以上も前のことです。大きな出来事といえば、郵政民営化やライブドアがテレビ局の株を大量に取得したことを記憶されている方もいらっしゃるかもしれません。
この頃はブロードバンドの普及が進み、mixiなど今のSNSの原型が台頭、ブログが盛んだった頃だといえます。その翌年や翌々年にかけて、ニコニコ動画やYouTubeがスタートし、Web2.0といわれる時代を築きました。その後、モバイル端末の利用率が、PCのそれを上回ったのが2010年ごろです。
現在ではSNSが当たり前のように利用され、物心ついたころからデジタルデバイスが身近にあるというデジタルネイティブと呼ばれる世代が存在します。2020年ごろにはインターネット広告がマス4媒体の広告費を上回りました。コロナ禍もあって、EC販売や動画配信サービの利用が普及しています。
緩やかではあるものの確実に人口が減少している局面にある日本では、更なる労働力の不足に備えてAIの利活用が進みつつあります。Cookieが排除され、インターネット上のプライバシー保護に配慮したデータ収集が実装され始めています。
このように技術や時代が変化してきた中で、インターネット環境やそれを使うユーザーの行動も大きく変化しました。もともとWebサイトを主軸としデータ収集と分析を担ってきた旧GAは、もうその役目を終えたといえるでしょう。そして、2020年10月14日にリリースされたGA4は、このような変化を受けて登場したものだといえます。
では次に、具体的にどのような点でGA4と旧GAが異なるのか見てみましょう。
GA4と旧GAとの違い
GA4と旧GAとの大きな違いは、主に次の5点です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
- 計測対象
- データ計測の自動化
- ユーザーのプライバシー保護に配慮したデータ収集
- レポート画面の変化
- 計測データのクラウド保存無償化
Webとアプリとをつなぐデータ計測
GA4では、イベントという方式で計測をします。イベント方式では、Webとアプリとを行き来するような動きをとらえることが可能になりました。旧GAでは、Webサイトのページを軸に、ページやセッションなどの指標が設定されていましたが、その点が大きく異なります。
こちらの記事でも取り上げましたが、Webに組み込んである動画を5秒見たユーザーと5分見たユーザーの行動が、旧GAでは同じ1ページビューとしてカウントされます。その後、ほかのサイトへ移った場合には直帰とみなされ、明らかに違う動画へのモチベーションを見落としてしまうことになりかねません。
一人の人がスマートフォンやPC、タブレットなど複数のデバイスを持ち、シーンに応じて使い分けるようになってきた昨今では、ページ単位の計測でユーザーの全体像を把握することが難しいといえます。イベントでは、ページからユーザーへと計測の軸が変更されました。
GA4では、このようなユーザー行動に対応するため、「データストリーム」という項目が新たに追加されました。Webとアプリとを自由に行ったり来たりするという、多くのユーザーが日常的に取っているであろう行動を、同一ユーザーのものとして認識可能です。
この変更にともなって、直帰率や離脱率が廃止され、「エンゲージ」という新たな指標が加わりました。エンゲージとは10秒以上の滞在、または2つ以上のイベントがカウントされた場合に該当します。ユーザーの興味関心を表すものとして、参考になりそうです。
データ計測の自動化
旧GAではタグを設定する必要のあったページ内のユーザー行動指標が、GA4ではクリックひとつで計測可能になりました。手動で個別にタグを設定することなく、ON/OFFのスイッチだけで計測開始できるようになったため、GTM(Googleタグマネージャー)を使わずに済みます。自動化されたのは、次の指標です。
- スクロール数
- 離脱クリック
- サイト内検索
- 動画エンゲージメント
- ファイルのダウンロード
なお、自動計測を開始するには、データストリームからウェブへと進み、測定強化のイベントのオプションをオンにします。自動ではなく、特定の期間を設定したい場合には、タグを使って個別に設定しなければなりません。
ユーザーのプライバシー保護に配慮したデータ収集
GA4はユーザーのプライバシー保護に配慮した設計になっています。Cookieを除外した上で、GA4の肝ともいえるイベントをベースとしたユーザーのデータ管理を活用し、プライバシー保護とデータ収集を両立させています。IPアドレスを取得しないのも特筆すべき点です。
欧州経済領域の一般データ保護規則(GDPR)またはカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)に役立つ情報が、アナリティクスヘルプで公開されています。欧州や米国など、プライバシー保護に関する要求が高い地域のニーズに応える設計ですので、その恩恵を受けることになるといえるでしょう。
- アナリティクスのデータ収集を無効にする方法(Webおよびアプリ)
- 広告をパーソナライズするためのデータ収集を無効にする方法(Webおよびアプリ)
- 広告のパーソナライズ(Webおよびアプリ)
- IP匿名化
- アナリティクスのデータ保持期間設定
- アナリティクスサーバーに保存されているエンドユーザーデータの削除
レポート画面の変化
レポート画面は、集計機能と分析機能との2つに分かれました。これまで以上に細かくユーザー行動を追えるようになりました。レポートの中にある探索機能を使えば、より詳細な情報を知ることができます。
具体的には、「会員登録していない人のコンバージョン」「この動画とこのページを見た人」などのようにです。その一方で、高性能になった分だけ、慣れるまでの間に複雑さや難しさを感じることがあるかもしれません。
データのクラウド保存無償化
旧GAの中でもアナリティクス360(有償版)を利用している場合、計測したデータをBigQueryと呼ばれるGoogleのクラウドデータベース上にエクスポートし、有料で保存することができます。GA4では、このデータ保存が無料化されました。
BigQueryとは、加工や集計をする前の状態にある、いわゆる生データのことです。データ分析に不可欠でありながら、あまりにも大量になるとデータ容量がかさむことから、その保存場所や保存期間に苦慮していた企業があったことは想像に難くありません。GA4では、その点もクリアになっています。
GA4および旧GAの違い
| GA4 | 旧GA |
データ計測対象 | Web | Web+アプリ |
計測方式 | イベントベース (ユーザー中心) | セッションベース (Webサイト中心) |
プライバシー保護 | Cookie除外可能 | Cookie使用 |
自動計測 | あり | メインは手動 |
データのクラウド保存 | 無料 | 有料 |
GA4には旧GAにはなかった機能が搭載されています。GA4を導入する・しないの判断は、機能の違いに加えて、導入や維持コストをどのように見積もるかにかかってくるといえるのではないでしょうか。
GA4に切り替える際の注意点
GA4に切り替える際の注意点を見ておきましょう。上記の一覧表は基本的な機能(設計)の違いですが、これ以外にも確認しておきたいことがあります。
- 学習コストが発生する
- GA4でどのようなデータを計測するか検討しておく必要がある
- 旧GAのデータをエクスポートしておく必要がある
学習コストが発生する
GA4は旧GAと比較すると、できることが増えた一方で、設定しなければならないことも増えました。やりたいことが分かっていても、設定方法がわからないというもあるかもしれません。サポートが終了する前に、デモアカウントでの学習や必要に応じてGA4の研修など、学習を進めておくことをおすすめします。
デモアカウント
https://support.google.com/analytics/answer/6367342?hl=ja#zippy=%2C%E3%81%93%E3%81%AE%E8%A8%98%E4%BA%8B%E3%81%AE%E5%86%85%E5%AE%B9
GA4でどのようなデータを計測するか検討しておく必要がある
GA4では、導入し設定を終えてからデータの測定が可能です。可視化したいユーザー行動の条件を整理し、どのようなデータを計測したいのか事前に決めておくことをおすすめします。
また、旧GAで長い間計測していたものの、あまり活用しなかったデータがあれば、このタイミングで計測をやめるというのも選択肢のひとつです。なお、前年対比を見たいという場合には、できるだけ早くGA4導入の検討を始めましょう。
旧GAのデータをバックアップまたはエクスポートしておく必要がある
旧GAのデータをバックアップ、またはエクスポートしておきましょう。CSVやExcel、スプレッドシートなど、いくつか選択肢があります。できれば、旧GAでの計測データをGoogleデータポータルへインポートし、ダッシュボードを作成しておくことをおすすめします。
まとめ
GA4と旧GAは、データ計測などの違いから、ほぼ別物といっても過言ではありません。しかし、冒頭でお伝えしたとおり、これは時代の流れを反映させたものといえます。ユーザー行動を可視化したデータに基づくマーケティングは、これからもいっそう進んでいくことでしょう。
弊社では、GA4の早期導入をおすすめしています。導入時はもちろんのこと、運用が始まってからも、アップデート対応やアクセス解析を行う担当者を置くなどのコストがかかります。しかし、GA4の新機能にはお伝えしたようなメリットがあります。
GoogleもGA4と旧GAの併用を推奨しています。期限が迫ってから慌てるのではなく、早い段階で慣れておきましょう。早く始めれば、その分、アドバンテージが大きくなります。