リスキリングで何を学ぶかというお悩みを抱える研修担当者も少なくないようです。「生き残りをかけて」「時代に乗り遅れないように」「競合他社も取り組んでいるから」など理由はさまざまですが、いざ何を学んだらいいかというご相談もままお受けします。そこで今回は、リスキリングで何を学ぶかと年代別おすすめの学習内容、研修の成果として取得をおすすめしたい資格についてお伝えします。
リスキリングで社員に学んでほしい内容
まずは、企業が社員にリスキリングで学ばせたいと考えている内容はどのようなものなのかを見てみましょう。
リスキリングで学習させたい内容
HR総研の調査によると、企業側が社員に学んでほしいと考えている分野は次のとおりです。同調査では、リスキリングの取り組みにより社員に習得してほしいスキルが挙げられています。もっとも多かったのは「IT・デジタルリテラシー・スキル」の75%で、次いで「ロジカルシンキング」の52%、「マーケティングスキル」の43%などです。
同調査では前年度との比較がなされ、どの項目も軒並みポイントが上昇しリスキリングに対する関心が高まってると述べています。その中でも特に、マーケティングスキルが前回より9ポイント上昇し大きく伸びていると紹介しています。
なお、デジタル分野に絞って詳しく見ていくと、もっとも高いのが「データ分析・統計」の67%で、「ITリテラシー」の56%、「AI・ブロックチェーン等の先端技術」の24%と続きます。ITやデジタル関連のスキルが上位に入ってくるのは、リスキリングが求められる理由を考えれば納得できる結果だといえるでしょう。
リスキリングは「事業成長」や「新規事業」のため
ビズリーチの調査では、リスキリングに取り組む理由を企業と個人に聞いています。「リスキリングに取り組む理由(企業課題)について教えてください」という企業への設問(複数回答可)では、「事業成長や新規事業に必要なスキルを持った人材を育成するため」という回答が75.4%ともっとも高くなっていました。
リスキリングの目的は、DXという大きな流れの中で今後の成長のためにデジタルを中心とする新しいテクノロジーを利活用できるようになることだといっても過言ではないでしょう。そのために自社に必要なスキルや能力は何かという原点に立ち返ると、内容を決めやすくなるのではないでしょうか。
実際にはリスキリングで何を学んでいるのか?
ここで取り上げる調査・アンケートは、会社の命令であれ自発的にであれ、リスキリングを経験したことがある個人を対象にしています。
リスキリングで学習されている内容
日本経済新聞が読者を対象に実施した調査によると、リスキリングに選ばれている分野は「プログラミングなどのIT関係」が27%、「AI・機械学習」が24%、「データサイエンス」が19%、「デジタルマーケティング」が14%です。デジタルとは離れますが、「英語などの語学」が38%だったとも報じています。
エン・ジャパンのユーザーアンケートでは、リスキリングに取り組んでいる分野で、もっとも多かったのは「ITリテラシー」の47%で、「語学」の32%、「データサイエンス・統計解析」の25%、「デジタルマーケティング」「AI・機械学習」の20%という結果でした。
女性会員を対象にしたリスキリングについてのアンケートを実施したのは、typeです。「どんなリスキリングに取り組んだことがあるか」という設問に対し、「PC基礎」40.1%、「語学」27.9%、「財務・経理」23.1%と続きました。次いで、「Webデザイン」15.4%、「プログラミング」13.4%となっています。
一部に語学や経理・財務といったものもありますが、おおむねIT・デジタル関連のスキルが学ばれているとわかります。
年代別おすすめの学習内容
年代別おすすめの学習内容は、以下のとおりです。弊社に寄せられるお問い合わせや受講実績だけではなく、公開されている調査やアンケートなども参考にしています。
20代におすすめ
20代のビジネスパーソンにおすすめの学習内容は、ExcelやWordといったマイクロソフトオフィス系アプリやプレゼンテーション研修です。
弊社のニュースフィードでも何度か取り上げていますが、Z世代は生まれたときからスマートフォン(以下、スマホ)やタブレットなどのデバイスが身近にあるデジタルネイティブです。両親や自分自身がスマホを持ち、SNSにも慣れ親しんでいるといえます。
その一方で、PC操作に不慣れな人も一定数いるといわれています。新入社員研修ではなかなか追いつかないPCやマイクロソフト系アプリの操作を学習させることで、PCスキルを底上げし生産性を高めます。
プレゼンテーションスキルの重要性については、改めてお伝えするまでもないかもしれません。長期間にわたって使い続けることができるスキルですので、早いうちに実施し習得させておけば非常にコスパがいいといえるのではないでしょうか。
30代におすすめ
一通りの実務を経験し、学習意欲が高い30代におすすめしたいのは、プログラミングやAI、デジタルマーケティングなどです。将来に備えてスキルアップしておきたい年代でしょうし、まだまだ人材としての市場価値を上げられる年代でしょう。
40代におすすめ
責任を負う立場や管理職に就く機会が増えてくる40代では、マネジメントスキルを磨いておくことをおすすめします。コミュニケーションスキルともいえるでしょうが、進捗管理や調整、トラブル対応、モチベーション管理、コスト管理など、多くのスキルが求められるものです。
定年が見えてくる50代におすすめ
50代におすすめの学習内容は、再雇用に不可欠なスキルとさせていただきました。定年という文字が現実味を帯びてくるであろう50代は、定年退職や定年再雇用、または早期退職といった大きな節目を迎える年代です。
社員の希望もさることながら、事業に役立つスキルを持っている人材でなければ再雇用の検討は難しいというのが、人事として偽らざるところでしょう。しかし、生産年齢人口(15~64歳)を含む日本の人口減少が確実に進行していることも事実で、今後は高齢者の活用がますます重要になるといわれています。
5~10年後の社員の平均年齢や人員構成を見据え、残された期間で50代の社員にどのようなスキルを身につけておいてもらいたいかを真剣に考えるときが来ているのかもしれません。
そこで、リスキリングに取り組まない理由を見ておきましょう。リスキリングに取り組まない理由を聞いた調査がありますので、ご紹介します。
リスキリングをやらない理由とは?
株式会社NEWONEが2022年12月に実施したリスキリングに関する調査では、「リスキリングをやらない理由は」という問いが設けられていました。多かった回答は、以下のとおりです。
- 自分の仕事はなくならないと思う
- 自分の会社はつぶれないと思う
- 将来にわたって給料の心配はない
自分の仕事や会社がなくなる可能性があるとは考えず、今後も安定した給与がもらえると考えているということになるでしょう。この調査では、年代別の回答も示されています。
傾向が似ている20代と30代
- 自分の仕事はなくならないと思う(16.4%、20.6%)
- 自分の会社はつぶれないと思う(6.7%、6.9%)
- 一歩が踏み出せない(6.9%、5.5%) ※回答は20代、30代の順
全体的な傾向と異なるのは「一歩が踏み出せない」です。これは、リスキリングをやりたいと思っていても実行できないということだとご理解ください。その理由は、「時間がない」がもっとも多くなっています。
忙しい40代
- 時間がない(16.1%)
- 自分の仕事はなくならない(13.1%)
- 身につけるスキルがわからない(7.7%)
40代では、「時間がない」からリスキリングに取り組めないという結果が出ています。何のスキルを身につけたらいいかわからないというのは、会社の重要なポジションを担う傾向にある年代だからこその意見なのかもしれせん。
定年が見えてくる50代
- そのまま定年までいけると思っている(15.6%)
- 自分の仕事はなくならない(12.1%)
- 時間がない(7.5%)
定年までのカウントダウンに入っているのが、50代の特徴だといえるでしょう。会社としては、まだまだ成果を上げてほしい年代でしょうが、社員の立場からすると「これまで働いてきたのだから」という気持ちが年齢とともに強くなるのかもしれません。
年代によって変わるリスキリングのモチベーション
冒頭の調査では、自主的にリスキリングをしている人がいることが示されています。人材としての自分の価値を上げるためや新しい仕事に挑戦するためなどの理由からです。その一方で、自分の仕事や給料に影響しないと考え、リスキリングの必要性を感じていない人がいることも見えてきます。社員の年代によって、リスキリングへのモチベーションが異なることも分かりました。
このことからいえるのは、ExcelやPowerPointといった多くの人にとって有用なPC操作でITスキルを全体的に底上げする、または職務や属性によって学ぶ内容を細かく設定し、実施回数を重ねていくということではないでしょうか。至って月並みかもしれませんが、このような丁寧な対応がリスキリングには求められるのかもしれません。
リスキリングの成果を見える化する資格
リスキリングのニーズ把握と同時に重要なのが、リスキリングの成果(効果測定)です。特に、予算を握っている経営者や役員層に対して成果を報告する際に重要視される傾向があると感じます。
研修の効果測定には、アンケートやヒアリング、レポート、事後テスト、面談などがありますが、弊社がおすすめしているのは資格の取得です。学習の成果を分かりやすい形で見える化できることから、研修効果の把握や経営層への報告に役立つといった声をお客様からいただくことも少なくありません。
そこで、リスキリングで新たなスキルを学習した後に取得をおすすめしたい資格をいくつかピックアップしてご紹介します。
デジタルマーケティング分野
デジタルマーケティング分野でおすすめしたいのは、ウェブ解析士です。マーケティングをこれから学ぶエントリーレベルの方やこれからデジタルマーケ、Webマーケを学ぶ方に向いています。
ウェブ解析士認定講座
ウェブ解析士は、ウェブやアプリのアクセス解析を元に、ビジネスの目標達成や業務改善のための意思決定をサポートするプロフェッショナルのことです。一般社団法人ウェブ解析士協会が認定する民間資格で、近年の合格率は約90%とされています。
高い合格率を支えている要因のひとつは認定講座で、認定を受けた組織のみ認定講座の実施が可能です。しっかりと準備しておけば取得しやすい資格だといえるでしょう。
さらにスキルアップを目指すなら、アクセス解析のスタンダードともいえるGoogleアナリティクス資格やGoogle検索と連動するウェブ広告がおすすめです。
Googleアナリティクス資格
https://support.google.com/analytics/answer/3424288?hl=ja
Google広告資格
https://support.google.com/google-ads/answer/9702955?hl=ja
エンジニアリング分野
エンジニアリング分野では、基本情報技術者試験は取得しておきたい資格だといえます。入門にふさわしい学びを得ることができますので、これからエンジニアを目指す方には特におすすめです。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)によって運営されている国家資格です。発足は1969年で、50年以上の歴史やそれにともなう認知度の高さもあります。
さらにスキルアップを目指すなら、Java認定資格がおすすめです。長期間にわたって安定したニーズのあるプログラミング言語ですし、汎用性の高さも魅力でしょう。大規模システムやAndroidアプリの開発にも用いられています。
Java
https://education.oracle.com/ja/oracle-certification-path/pFamily_48
なお、弊社の講座は一部試験対策となりますが、仕事に就く、または活かすための実践スキルを学ぶ講義内容が主となります。
まとめ
リスキリングで何を学ぶかは、企業によって異なるのが自然です。これなら絶対に間違いないというものはありませんが、リスキリングが求められる背景や危機感などから、デジタル関連のスキルであれば今後の事業に役立つ可能性が高いといえます。年代によってリスキリングに対するモチベーションが変わってくることも、考慮したほうがよいでしょう。
リスキリングがどのような効果や実績を上げているかについては、資格という目に見える分かりやすい形にして記録しておくことをおすすめします。費用対効果の把握はもちろんのこと、社員にとっても財産となるからです。
リスキリングは、一度実施したら終わりというものではありません。時代や社会、顧客などのニーズに合わせて継続していくことが重要です。無理なく継続できるリスキリングについては、ぜひ一度ご相談ください。