前回の記事で、事業内訓練と事業外訓練の違いについてご紹介しました。そこで今回は、事業外訓練で助成金の支給対象となる項目や支給対象外となる項目、助成金の支給対象から外れてしまうケースについて、ご説明したいと思います。
事業外訓練における助成対象費用
人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」の場合、訓練方法が事業内であっても、事業外であっても、訓練にかかる経費(経費助成)と訓練期間中の賃金(賃金助成)との双方に対して助成金が支給されます。経費助成と賃金助成にはそれぞれ、助成額や助成率、支給上限額が設けられていますので、まずはその点を振り返ってみましょう。
助成率・助成限度額(研修期間中の賃金に対する支援)
経費助成率 |
賃金助成率(1人1時間) |
1事業所1年度あたりの助成限度額 |
中小企業 |
大企業 |
中小企業 |
大企業 |
75% |
60% |
960円 |
480円 |
1億円 |
大企業よりも中小企業に対して手厚く助成される点については、以前にお伝えしたとおりです。
受講者1人あたりの経費助成限度額
10h以上100h未満 |
100h以上200h未満 |
200h以上 |
中小企業 |
大企業 |
中小企業 |
大企業 |
中小企業 |
大企業 |
30万円 |
20万円 |
40万円 |
25万円 |
50万円 |
30万円 |
次に、事業外訓練の経費助成について詳しく見てみましょう。
事業外訓練において助成金支給対象となる経費
助成金の支給対象となる項目が比較的限定されている事業内訓練に対し、事業外訓練の場合、1名あたりの受講料が明確になっていることから、受講料に含まれるすべての費用が助成金支給対象だとお伝えしました。具体的には、次のようなものがあります。
- 入学金、受講料、テキスト代などの研修費用
- あらかじめ受講案内などで定めている費用
- 訓練と関連性のある一部の資格試験受験料
- 消費税
なお、動画視聴による研修といったサブスクリプション(定額制サービス)による訓練の場合、基本利用料はもちろんのこと、初期設定費用などのように訓練に必要とされる費用も助成対象です。
事業外訓練において助成金支給対象となる賃金
賃金助成については、訓練期間中における所定労働時間内の賃金が助成金の支給対象となります。所定労働時間外や所定休日に実施した場合は支給対象外です。所定休日の場合は、あらかじめ休日を振り替えておけば、問題ありません。
なお、賃金助成の支給限度額については、1名1訓練あたり1200時間とされています。1200時間とは、1日7.5時間を所定労働時間とする企業の場合、160日分です。所定労働日数が月20日の企業の場合、8ヵ月分の賃金が助成されることになります。
では次に、弊社のオープン講座で、具体的な助成金額を試算してみましょう。
弊社オープン講座での助成金支給額の試算
弊社のオープン講座とは、事業外訓練に該当する研修です。事業内訓練に対応する「オーダーメイド研修」に対して、日程やカリキュラムが決まっているものを指します。ここでは、昨今お問い合わせが増えている下記3講座について、実際に試算してみましょう。
ウェブ広告運用実践講座
弊社のウェブ広告運用実践講座は、自社でウェブ広告の運用を始めたいというニーズに応える内容が特徴の講座です。基礎からウェブ広告の運用をマスターできるカリキュラムで、初心者の方でも取り組みやすい内容になっています。研修時間は10時間です。
中小企業の例
講座料金:79,200円(税込)
経費助成:79,200円×75%=59,400円(上限30万円)
賃金助成:960円×10時間=9,600円
合計:59,400円+9,600円=69,000円
差額:79,200円-69,000円=10,200円
中小企業の場合、セット料金で79,200円のところを、10,200円で受講可能になります。助成金を利用すると、実質の費用負担は13%弱まで低減します。
大企業の例
講座料金:79,200円(税込)
経費助成:79,200円×60%=47,500円(100円未満切り捨て、上限20万円)
賃金助成:480円×10時間=4,800円
合計:47,500円+4,800円=52,300円
差額:79,200円-52,300円=26,900円
大企業の場合は、差額が26,900円です。実質の費用負担は、約34%となります。
ウェブ広告運用実践講座
https://idigi.jp/webmarketing/ads-operation/
Googleマーケティングプラットフォーム講座
Googleマーケティングプラットフォーム講座は、この7月に移行が予定されているアクセス解析ツール「GA4」(ユニバーサルアナリティクスを含む)やレポート作成ツール「Looker Studio(ルッカースタジオ)」、タグ管理ツール「Tagマネージャー」といった、Googleが提供するデジタルマーケティングツールの基本的な使い方を学ぶ講座です。デジタルマーケティングの基礎と3つのアクセス解析ツールの学習で合計30時間となっています。
中小企業の例
講座料金:237,600円(税込)
経費助成:237,600円×75%=178,200円(上限30万円)
賃金助成:960円×30時間=28,800円
合計:178,200円+28,800円=207,000円
差額:237,600円-207,000円=30,600円
中小企業の場合、セット料金で237,600円が、30,600円で受講可能となり、実質の費用負担は、ウェブ広告運用講座と同様に13%弱まで低減します。
大企業の例
講座料金:237,600円(税込)
経費助成:237,600円×60%=142,500円(100円未満切り捨て、上限20万円)
賃金助成:480円×30時間=14,400円
合計:142,500円+14,400円=156,900円
差額:237,600円-156,900円=80,700円
大企業の場合は、差額が80,700円です。実質の費用負担は、こちらもウェブ広告同様に約34%です。
Googleマーケティングプラットフォーム講座
https://idigi.jp/webmarketing/gmp/
デジタルマーケティング総合講座
デジタルマーケティング総合講座は、デジタルマーケティングの全体像や実務に必須とされるツールの使い方に加えて、ウェブ集客の仕組み、集客に不可欠なコンテンツの最適化について総合的に学ぶ講座です。受講時間は合計で50時間となります。
中小企業の例
講座料金:396,000円(税込)
経費助成:396,000円×75%=297,000円(上限30万円)
賃金助成:960円×50時間=48,000円
合計:297,000円+48,000円=345,000円
差額:396,000円-345,000円=51,000円
中小企業の場合、セット料金で396,000円が、51,000円で受講可能となり、実質の費用負担は、やはり13%弱まで低減します。
大企業の例
講座料金:396,000円(税込)
経費助成:396,000円×60%=237,000円(上限20万円)
賃金助成:480円×50時間=24,000円
合計:200,000円+24,000円=224,000円
差額:396,000円-224,000円=172,000円
大企業の場合は、差額が172,000円です。実質の費用負担は、約43%になります。
デジタルマーケティング総合講座
https://idigi.jp/webmarketing/wm-general/
助成金支給対象外となるケース
最後に、助成金の支給対象外となるケースについてお伝えしましょう。ポイントは大きく3つに分かれます。
- 助成金の不正受給
- 雇用保険料未納入や労働法違反などの法令違反
- 提出書類の内容に対する問い合わせや修正に応じないなどの不適切な対応
- 助成金の不正受給
不正受給とは、虚偽の書類を提出したり、事実と異なる申告をしたりするなどして、本来であれば受給できない助成金を受給または受給しようとすることです。不正受給を行ってから5年間は、助成金の支給対象外となります。
また、不正に受給した助成金は、返還しなければなりません。その返還に応じない、または事業主名の公表に応じない場合も、支給対象外とされます。不正受給は、助成金支給対象外となるだけでなく、場合によっては裁判となる可能性も考えられるでしょう。
人材開発支援助成金の財源は、雇用保険です。したがって、雇用保険を正しく納付している必要があります。支給申請をした年度の前年度より前のどこかの年度で、雇用保険料を正しく収めていない年度があれば支給対象外となります。この場合、支給申請をした日の翌日から2カ月以内に、未納分を納付しなければなりません。
また、支給申請日の前日から過去1年間に、労働関係法令に違反していた場合も、支給対象とはなりません。
管轄労働局長による申請書類の確認や修正などの求めに応じない場合も、支給対象外となります。支給条件を満たすかどうかの審査に必要な調査や必要書類の提出、提示に応じない場合も同様です。
このほかにも、必要な手続きを定められた期日までに行わないなど、支給要件を満たしていない場合も、助成金は支給されません。詳しくは、厚生労働省のサイトをご確認ください。
事業展開等リスキリング支援コース
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001019762.pdf
まとめ
今回は、弊社の人気講座3つを例に、中小企業と大企業での助成金支給額の試算を交えて、事業外訓練の支給対象や助成金支給額について見てきました。
繰り返しになりますが、事業外訓練は日程やカリキュラムなどが決まっていて、研修をパッケージとして選ばなければならないという反面、受講料に含まれるものすべてが助成金の支給対象です。
前回の記事でもお伝えしたとおり、講義後の質疑応答で個別具体的な質問にもアドバイスさせていただいています。講義前後の時間を有効に活用し、貴社の課題解決や人材育成に弊社オープン講座をお役立ていただければ幸いです。