この数カ月 、人材開発支援助成金の「事業展開等リスキリング支援コース」について、ご説明してきました。今回は、数多くの助成金申請を見届けてきた立場から、助成金活用の肝となる申請の流れと、弊社に寄せられるお問い合わせなどをもとに作成した「よくある質問(FAQ)」を踏まえ、助成金申請のポイントを3つご紹介します。
人材開発支援助成金の申請の流れ
早速、人材開発支援助成金の申請の流れを見ていきましょう。申請には、下記のようなステップがあります。
- 助成金申請の前提条件を満たしていること(事前確認)
- 訓練実施計画書の作成および提出
- 訓練の実施
- 支給申請書の作成および提出
- 助成金支給または不支給の決定
この流れに沿い、何をいつまでにしなければならないのかについて、それぞれ見ていきましょう。厚生労働省のサイトには、難しい言葉が並んでいることも珍しくありません。できる限り、わかりやすく説明していきたいと思いますので、お付き合いください。
①助成金申請の前提条件とは?
助成金申請の前提条件は2つです。労働局に行き、下記の相談をすることから助成金申請は始まります。
- 雇用保険適用事業所の事業主であること
- 事業主の努力義務を果たしていること
雇用保険適用事業所の事業主であること
雇用保険適用事業所の事業主であることというのは、労働関連の法律を守り、かつ労働保険を適正に支払っている企業だということです。具体的には、下記2点がポイントになります。
- 会社都合による解雇がないこと
- 労働保険料の未納がないこと
会社都合による解雇が過去半年間にあった場合、助成金の利用はできません。ただし、1年以上前なら利用可能です。(後述するリスキリング支援コースでは不問)
労働保険とは、労災保険と雇用保険の2つを意味します。どちらの保険料についても、助成金を申請しようとする年度の前年度以前の未納付がないことが必須といえます。
こちらの前提条件は、助成金を利用しようとする企業として適正かどうかを判断するためのものといえるでしょう。
事業主の努力義務を果たしていること
助成金を利用しようとする企業に対して、定められている努力義務があります。
- 社内の職業能力開発推進者の選任
- 社内の事業内職業能力開発計画の策定・周知
職業能力開発推進者の選任
厚労省によると、職業能力開発推進者とは、「従業員の職業能力開発および向上に関する企画や訓練の実施に関する権限を有する者」を選任するのが望ましいとされています。
従業員に対する教育研修やトレーニングなどの企画・実施についての責任者ということですので、人材開発やキャリアコンサルティングなどを担当する部署があれば、その部課長です。そのような部署がない場合には、人事や労務管理などを担当する部課長ということになります。
事業内職業能力開発計画の策定・周知
事業内職業能力開発計画とは、「事業内計画に基づき、訓練等、職業能力開発のための休暇、職業能力の評価、キャリアコンサルティングその他の職業能力開発に関する計画であって1年ごとに定めるもの」です。つまり、1年ごとに更新される研修計画をさします。
1年ごとに研修計画を作成し、社内に周知することも前提条件のひとつということです。
こちらにつきましては、助成金を利用するための下準備という位置づけに近いといえるでしょう。助成金申請の前提条件を満たしているという確認ができたところで、次のステップに進みます。
②訓練実施計画書の作成および提出
ここから書類作成の作業に入ります。人材開発支援助成金の利用には、下記の書類を作成し提出する必要があります。
- 訓練実施計画届・年間職業能力開発計画(様式第1号)
- 事業展開等実施計画(様式第2号)
リスキリング支援コースを利用する場合には、計画届に加えて事業展開等実施計画が必要です。そのほかにも、助成金利用に際する誓約書のような書類「事前確認書(様式第11号)」や、受講者一覧(「対象者一覧」(様式第4-1号))も提出しなければなりません。
訓練実施計画書の作成は、訓練開始日から起算して1カ月前までに各都道府県の労働局に提出しなければなりません。助成金の申請は、提出期限の厳守が基本です。念のため、ここで具体的な例を見てみましょう。
- 訓練開始日が4月1日の場合、提出期限は3月1日
- 訓練開始日が4月30日の場合、提出期限は3月30日(3月31日ではない)
- 訓練開始日が5月31日の場合、提出期限は4月30日(4月31日は存在しない)
- 訓練開始日が3月29日、30日、31日の場合、提出期限は2月28日
労働局から書類の不備を指摘されたり、修正を求められたりした場合や追加の書類を求められた場合なども同様に、速やかに対応しましょう。
なお、提出した訓練計画に変更が生じた場合、変更届(「訓練実施計画変更届」(様式第3号))を提出します。変更届を提出せずに、変更した計画を実施してしまうと、変更分については助成金の支給対象外となるため注意しましょう。
計画書にどのような添付書類が必要になるかについては、後述します。
③訓練の実施
労働局に提出した計画書に基づいて、訓練を実施します。訓練に関する費用は、助成金の支給申請をする前にすべて支払い終えておかなければなりません。無事、訓練が終了したら、次は助成金の支給申請です。
④支給申請書の作成および提出
助成金の支給申請には、下記の書類の提出が必要です。
こちらも提出期限があり、訓練終了日の翌日から起算して2カ月以内となっています。資格試験を受験し、その受験費用についても助成を希望する場合には、受験日の翌日から起算して2カ月以内が提出期限となります。特に、支給申請では期限厳守が求められますので、注意が必要です。
⑤助成金支給または不支給の決定および入金
申請が受理されてから支給または不支給の結果が出て入金されるまでには、しばらく時間がかかります。弊社の経験上、支給申請から入金までは早くても約1カ月、長い場合には半年から1年かかるケースもありました。都道府県によって支給決定時期が異なることもあり、こればかりは一概にどれくらいと期間を示すことはできません。
ここで一旦、提出書類と添付書類、その提出のタイミングをまとめておきましょう。
提出書類とそのタイミング
助成金利用に向けた労働局とのやりとりの中で、必要となる書類や提出のタイミングをまとめてみました。原則として、申請書類は提出期限厳守ですので、スケジュール管理にお役立てください。前章での番号を、そのままこちらでも使っています。
訓練初日の1カ月前まで:事前準備および訓練計画書の提出
①助成金申請の前提条件を満たしているか確認(②と同時でも可)
②実施計画書の作成および提出(講座初日の1カ月前まで)
- 実施計画書
- 事業展開等計画書
- 事前確認書
- 対象者一覧など
これに加えて、以下の添付書類が必要です。
- 企業全体の常時雇用する労働者数が分かる書類(事業所確認票(様式第17号)または会社案内など)
- 訓練対象者が被保険者であることが確認できる書類(雇用契約書など)
- OFF-JTの実施内容等を確認するための書類(訓練の概要が分かる書類)など
サブスクリプションサービスの場合、雇用保険の被保険者であることが分かる書類は不要です。さらに、事業内訓練なのか事業外訓練なのかによって、提出する添付書類が変わってきます 。
なお、指摘や修正、追加書類を求められた場合には、迅速に対応しましょう。①と②は同じタイミングでの提出でも問題ありません。
訓練中:訓練記録の作成
この後の支給申請に訓練報告が必要になります。研修内容や日時、出席者などの実績を記録しておきましょう。
訓練終了日から2カ月後まで:助成金の支給申請
- 支給申請書(様式第5号)
- 賃金助成の内訳(様式第6号)
- 経費助成の内訳(様式第7-1号)
- OFF-JT実施状況報告書(様式第9号)
添付書類には、以下のようなものがあります。
- 申請事業主が訓練にかかる経費を支給申請日までに全て負担していることを確認するための書類(領収書など)
- 事業主が実施した訓練の実施期間中の賃金が支払われていることを確認できる書類(賃金台帳など)
- 事業主が実施した訓練実施期間中の所定労働日および所定労働時間の確認書類(就業規則など)
- 訓練等実施期間中の対象労働者の出勤状況・出退勤時刻を確認するための書類(出勤簿など)など
訓練計画書提出時と同様に、事業内訓練なのか事業外訓練なのかによって提出する書類は異なります。資格試験を受験した場合には、受験を証明する受験票などの書類や領収証などの受験料を確認できる書類が必要です。ここまでに挙げた書類のほかにも、労働局長に求められた場合には、追加書類を提出します。
訓練終了日から3カ月以上後:助成金の入金
支給申請が受理されてから数カ月から半年後に助成金が入金されます。
企業によって、提出を求められる書類や添付書類は異なる場合があります。ここで示しているのはあくまで基本的な書類のみですので、詳しくは管轄の労働局にご確認ください。なお、関連書式の一覧は、こちらで確認可能です。
人材開発支援助成金 申請書類
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000159233_00014.html
助成金申請の成功率を上げる3つのポイント
事業外訓練を選ばれるお客さまは、ほぼ100%助成金を利用されます。中には、申請しようとしたものの、申請まで至らなかったという経験をされたお客さまもいらっしゃいます。ここでは、助成金申請についてのよくある質問を踏まえて、助成金申請のポイントを少しだけお伝えしましょう。
- 助成金申請から入金までの道のりは平坦ではないと心得る
- 修正や再提出などは言われたとおりに対応する
- 助成金申請サポートの具体的な内容を必ず確認する
助成金申請から入金までの道のりは平坦ではないと心得る
弊社には、さまざまなお客さまがいらっしゃいます。その中には、次のような理由から助成金申請を断念したというご経験をされたケースが珍しくありません。
- 作成途中で諦めた
- 期限内にすべての書類が用意できなかった
- 差し戻しに対応しきれなかった
そもそも助成金を知らないお客さまもいらっしゃいますが、知っていて利用しようとしたにもかかわらず、断念せざるを得なかったというのは不本意でしょう。
助成金は、企業が支払う雇用保険を財源として運用されているといわれています。助成金の趣旨や目的に沿った申請なのか、添付書類の不備や各書類の記載の抜け漏れなど、チェックが厳しくなることは想像に難くありません。
しかし、断念せざるを得なかった企業がある一方で、これまで数々の企業が助成金を受給してきたことも事実です。その違いのひとつは、申請時の対応にあるといえるでしょう。
修正や再提出などは言われたとおりに対応する
厚労省の助成金ページを隅々まで確認し、完璧に書類を準備したつもりでも、助成金の申請では窓口で思わぬ指摘を受けることがあります。そのような場合、言われたとおりに対応しましょう。
もっとも避けたいのは、「Aさん(別の担当者)からは、そのように聞いている」「他県ではこうだった」「サイトには、このように書いてある」など、自分の主張の根拠をほかのところから持ってくることです。その意味では、同じ担当者を訪ね続けることもポイントといえます。
何度となく修正を求められることもあるかもしれません。しかし、繰り返し応じることで書類は必ず整っていき、最終的には受理されます。ここは、ひとつの踏ん張りどころといえるでしょう。
助成金申請サポートの具体的な内容を必ず確認する
弊社に限らず、助成金申請サポートを謳っている企業は少なからず存在します。しかし、弊社のサポートを受けたお客さまから、次のようなお声をお聞きしたことがあります。
「大量にある助成金申請書類の作成方法で分からない事が多く、何度もご質問しても細かいところまで本当に親切にサポートしていただき、非常に安心できるサポートだと思いました。あの量の書類を自力で作成することはとんでもない時間がかかると思いました 」
また別のお客さまからは、他社で助成金申請のサポートを受けたことがあるものの、メール対応のみで不便だったとお聞きしています。聞きたいことが聞きたいタイミングで聞けず、結果として、書類の不備から助成金が大きく減額されたそうです。手前味噌かもしれませんが、次のように評価していただきました。
「アイクラウドさんでは、何度も何度もご相談ができ、すべて1回で窓口で受理されて本当にありがたかったです。率直に思ったのは、「サポート」は事前にどのようなサポートまでしてくれるのかを研修会社に必ず確認したほうが良いと思いました 」
助成金申請サポートの内容は、研修会社によって大きく異なる場合があります。助成金を利用できるからこそ実施しようと考えている研修で、助成金が減額されたら大きな痛手でしょう。
どのような助成金申請サポートをしているのかといったことやサポートの実績について、あまり具体的に伝えようとしない、または話を避けるような素振りを見せる研修会社との取引は、差し控えるほうが賢明です。
アイクラウドの「無料」助成金申請サポート
弊社の助成金申請サポートについて、簡単にご説明します。大きな特徴は、以下の5点です。
- 助成金受給率100%(受給条件を満たす場合)
- 丁寧な申請書類の作成サポート
- 専門スタッフによる個別相談やアドバイス
- 相談やアドバイスの回数制限なし
- 相談方法の制限なし(メールのみなど)
研修費用と申請の手間を大きく削減し、研修そのものに集中できる環境を整えるところから、弊社ではお手伝いさせていただきます。助成金申請サポートはすべて無料です。
助成金活用
https://www.icloud.co.jp/josei/career.html
まとめ
ありがたいことに、弊社の助成金申請サポートをご利用いただいたお客さまは、この3月だけでも約50社に上り、すべての申請が無事に受理されました。このことは、弊社にとっても非常に喜ばしいことです。
研修の実施を考える際、費用について考えない企業はありません。人材開発支援助成金は、人材育成の後押しとなるものですし、新設された事業展開等リスキリング支援コースは、これからのデジタル時代にますます必要とされる人材育成にもってこいの助成金といえます。
事業展開等リスキリング支援コース
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001019762.pdf
今回ご紹介した申請の流れを、助成金の申請にご活用ください。ご相談もお待ちしております。人材開発支援助成金を活用して人材育成を図り、貴社ビジネスのお力となれれば幸いです。