2023(令和5)年4月1日に人材開発支援助成金のリスキリング支援コースのパンフレットが新しくなりました。新パンフレットの公開に伴い、内容も一部変更されています。そこで今回は、主な変更点をご紹介していきます。
今回の主な変更点
早速、今回の改正によって生じた主な変更点を見ていきましょう。主要なものは、下記の6点です。
①受講回数の制限
②訓練経費全額支払い後に返金が行われた場合の注意事項
③および④訓練計画届提出時の添付書類の変更と様式番号変更
⑤計画届の名称変更
⑥OFF-JT実施状況報告書の様式番号変更
この中でも重要なのは、①②③といえるでしょう。ほかの3つは様式名称や番号の変更です。今後は窓口で新しい様式が使用されているかどうか確認されるでしょうから、書類作成前によく確認してください。
①受講回数の制限
変更点の中でも最初に挙げたいのが、受講回数の制限です。これまで受講回数については触れられていませんでしたが、今回、パンフレット2ページ目の最下部、目につくように下記の一文が記載されています。
「〔令和5年4月1日の主な改正内容〕
・事業展開等リスキリング支援コースの助成が受けられる訓練の受講回数を同一の労働者に対して一の年度(支給申請日を基準とし4月1日から翌年3月31日まで)で3回までとしました」
パンフレット15ページ「③支給に関する制限」の最初にも、次のように書かれています。
「●訓練等受講回数の制限
助成対象となる訓練等の受講回数の上限は、1労働者につき1年度で、3回までです」
1人が1訓練当たり受給できる金額には、経費助成と賃金助成のいずれにも明確な限度額が設けられていました。1事業所が1年間に受給できる金額の上限も設けられていましたが、1人が1年間に受講できる回数については、これまで明言されていなかったといえます。その点に対応したといえるでしょう。
これを受けて、受講生の受講記録を年間で確認できるようにしておくことをおすすめします。受講回数に上限が設けられたことで、助成金の申請時に当該受講生の受講回数が分かる書類の提出を求められるようになることは間違いありません。今から備えておきましょう。
②訓練経費全額支払い後に返金が行われた場合の注意事項
訓練費用全額支払い後に返金された際、経費助成の対象外となる旨の注意書きが追加されました。
パンフレット17ページ目「①対象となる経費」にて、下記のように記載されています。
「※訓練経費を全額支払った後に、当該訓練経費に対して返金(申請事業主の負担額の実質的な返金の性質を有する金銭の支払いを含む)が行われる場合、当該経費は経費助成の対象にはなりません」
返金された訓練費用が経費助成の対象とならないのは、適切な対応でしょう。これまで、運用の際にそのように対応してきたのでしょうが、しっかりと明文化したということなのかもしれません。
③および④訓練計画届提出時の添付書類の変更と様式番号変更
訓練計画届出時に必要な提出書類の中に、一部変更がありました。事業内訓練と事業外訓練とに共通する添付書類のひとつ目「事業所確認票」の部分です。これまで記載されていた「会社案内、パンフレットなど」が削除されています。新パンフレット18ページ目です。
旧:企業全体の常時雇用する労働者数が分かる書類
(事業所確認票(様式第17号)、会社案内、パンフレットなど)
注:企業全体の常時雇用する労働者数により中小企業事業主に該当する場合に提出してください。
新:事業所確認票(様式14-1号)
注:企業全体の常時雇用する労働者数により中小企業事業主に該当する場合に提出してください。
こちらは中小企業に必要な添付書類です。常時雇用する労働者数は、会社案内やパンフレットなどではなく、指定の書類で提出することになりました。また、様式の番号も17号から14-1号へと変更されています。今後、助成金の申請を検討されている場合には、正しい様式を使っているかご確認ください。
期間内の新たな訓練は「変更届」から「計画届」へと変更
なお、これまでは、提出した計画届になかった訓練を行う場合、「訓練実施計画変更届」を提出する必要がありました。しかし、今回の改正で、変更届ではなく、その都度計画届を提出するように変更されています。こちらは、リスキリング支援コースを含む各コースに共通するものです。
こちらにつきましては、人材開発支援助成金のこちらの案内に記載されていますので、詳細は下記の案内にてご確認ください。
厚生労働省「人材開発支援助成金を利用しやすくするため、令和5年4月1日から制度の見直しを行いました」
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001085505.pdf
⑤計画届の名称変更
事業主が訓練を実施する場合に、共通して必要となる計画書も以下のように名称変更されています。新パンフレットの18ページ目です。
旧:人材開発支援助成金 訓練実施計画届・年間職業能力開発計画(様式第1号)
注:申請者が代理人の場合は委任状(原本)が必要となります。
新:職業訓練実施計画届(様式第1-1号)
注:申請者が代理人の場合は委任状(原本)が必要となります。
こちらは変更後、コンパクトになりました。名称変更だけでなく、番号に枝番が追加されています。
⑥OFF-JT実施状況報告書の様式番号変更
OFF-JT実施状況報告書は、様式番号が変更されました。計画届同様に、枝番が追加されています。新パンフレットの20ページ目です。
旧:OFF-JT実施状況報告書(様式第9号)
※ スクーリングを実施した時間の実施状況について提出してください。
※ eラーニングによる訓練等、通信制による訓練等及び定額制サービスによる訓練の場合は不要です。
新:OFF-JT実施状況報告書(様式第9-1号)
注: スクーリングを実施した時間の実施状況について提出してください。
注:eラーニングによる訓練等、通信制による訓練等及び定額制サービスによる訓練の場合は不要です。
こちらは様式番号の変更だけとも受け取れますが、その分、確認不足が発生しやすいともいえるでしょう。よく確認するようにしてください。
早期検討早期利用のおすすめ
人材開発支援助成金は、これまでに何度となく改正を重ねてきています。過去のお知らせを振り返ってみると、コロナ禍に喘いでいた2021年度から改正の頻度が上がっているように見えます。その中で、リスキリング支援コースの新設が発表されたのは、2022年10月と、約1年半前のことです。
リスキリング支援コース新設が発表された当時、「5年で1兆円」という規模の大きさも大いに注目されました。しかし、計算してみると、チャンスは意外と限られているということに気づきます。1事業所あたりの助成金支給上限額は1億円ですから、単純に1億円で割ると、利用できる企業の数は1万社ということになるからです。
もちろんすべての企業が1億円規模の訓練をするとは限りません。しかし、それでも1万社という具体的な数値が見えると、印象が変わってくるのではないでしょうか。国の予算は限られていますので、ぜひ早めに検討されることをおすすめします。
まとめ
今回、人材開発支援助成金が改正され理由は、「制度を使いやすくするため」とされています。リスキリングへの注目が高まっている中、助成金の制度拡充や制度そのものの使いやすさ向上といった改善や変更は、今後も図られていくでしょう。助成金の最新情報に注意を払って、機会を逃すことなく活用してください。
事業展開等リスキリング支援コース(詳細版)
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001083279.pdf