Microsoft Power Platformにできることとできないこととは?

Microsoft Power Platformにできることとできないこととは?

Microsoft Power Platformという製品をご存じでしょうか。Office系アプリやOutlook、Teamsと比べるとまだあまり知られていない感がありますが、実は非常に便利なツールです。業務プロセスやフローを簡単に自動化できることが大きな特徴で、プログラミングの知識がなくても開発できるという点が、近年、注目を集めています。

Microsoft Power Platformとは?

Microsoft Power Platformとは、Microsoft社によって提供されている業務アプリケーション構築のためのクラウドサービスです。以下、5つのアプリから構成され、総称してMicrosoft Powe Platformと呼ばれます。

  • Microsoft Power BI
  • Microsoft Power Apps
  • Microsoft Automate
  • Microsoft Virtual Agents
  • Microsoft Pages

ここに挙げたアプリに共通しているコンセプトは、ノーコードまたはローコードでの開発ができ、業務の自動化を図れるという点です。ノーコードとは、コーディングの知識がなくてもアプリ開発ができることを意味します。それに対してローコードとは、必要最小限のコーディングで開発するという違いがあります。

通常、アプリ開発には、コーディングが欠かせません。コーディングとは、プログラミング言語でコードというコンピュータへの指示を書いていくことです。よく知られているところでは、JavaやC言語、Pythonなどのプログラミング言語があり、それぞれにルールに則ったコーディングをする必要があります。

しかし、ノーコード・ローコード開発では、非エンジニアでも自分の考えたことを視覚的かつ直感的にシステム化できる仕組みが搭載されています。プログラミングを知らなくてもアプリ開発が可能ですし、プログラミングの初歩を知っていれば修正や調整も可能になることから、年々関心が高まっています。

導入実績が示す注目度の高さ

関心の高まりは、導入実績に表れています。Microsoft社の公式YouTubeチャンネルでは、Fortune500企業の97%で採用されていると公表していますし、日本でも名だたる企業がMicrosoft Power Platformの導入事例として紹介されています。

国内導入事例
https://www.microsoft.com/ja-jp/biz/dynamics/bizapps-customers

5つのアプリにできること

Microsoft Power Platformを構成する5つのアプリにできることをそれぞれ簡単にご紹介しましょう。

Power BI

Power BI(パワービーアイ)は、データ収集や分析をするアプリです。各種データベースにアクセスし、データを収集・分析した上でデータをグラフや表といったレポートの形に、簡単な操作で表せます。

データのインサイトを確認する手間が削減されるため、データに基づいて検討し判断するというデータドリブン経営につなげやすいといえるでしょう。なお、BIとは、Business Intelligenceの略です。

Power Apps

Power Apps(パワーアップス)では、ローコードでアプリケーション開発ができます。プログラミングの知識があまりなくても、選択やドラッグアンドドロップといった簡単な操作を中心にアプリ開発を進めていけるという、開発を簡易化したツールです。

Power Appsで開発したアプリは、スマホやタブレット、PCなど、デバイスに合わせて開発し直す必要がありません。コーディングの基礎知識を持つ人材が必須ですが、アプリ開発や導入のスピードアップとコストダウンが可能です。

Power Automate

毎日の業務の中で繰り返される一連の作業を自動化するのがPower Automate(パワーオートメート)です。ワークフローや業務プロセスをRPA(Robotic Process Automation)の技術を用いて、自動的に実行するよう設定します。

既存アプリ内で行う複数の作業を自動化するのはもちろんのこと、別アプリとの間をつなぐ作業も自動化可能です。例えば、デスクトップアプリとWebブラウザでの操作を連携させることもできます。しかも、アプリ同士の連携はデータコネクタを使ってつなげ合わせるだけと非常にシンプルです。

Power Virtual Agents

Power Virtual Agents(パワーバーチャルエージェント)なら、ノーコードでチャットボットを構築できるため、社内外の問い合わせ対応の負担を軽減できます。会話の流れがツリー形式で分かりやすく示されることから、直感的な操作で流れを組み立てられるのが特徴です。

ユーザーの自然言語に対応しているため、AIが問い合わせ内容を判断しユーザーが求める情報へと導きます。回答方式には選択式・記述式があり、TeamsをはじめとしてLINEやSlackなどのアプリに組み込むことも可能です。

Power Pages

Power Pages(パワーページ)は、より簡単にWebサイトを作成できるアプリです。Webサイトを構築したり追加機能を実装したりする際には、業者に外注することが多いかもしれません。しかし、Power Pagesを使えば、入力フォームの作成や会員制サイトにするのも簡単です。

ここに挙げた5つのアプリには共通する機能がありますので、併せてご紹介しておきましょう。以下の機能は、Microsoft Power Platformを下支えするものです。

Power Platformに共通する機能

  • Microsoft Database
  • データコネクタ
  • AI Builder

Microsoft Dataverse

Microsoft Dataverse(マイクロソフトデータバース)は、5つのアプリに共通するデータベースです。標準化されたデータベースで、データ収集や分析、整理といった機能があり、データ活用に欠かせません。

データコネクタ

アプリ同士を連結させるデータコネクタは、Microsoft Power Platformのアプリと450以上の製品とを連携可能です。Microsoft製品だけではく他社製品も非常に簡単に連携できます。

AI Builder

AI Builderでは、AIの構築や実装が可能です。自然言語の処理に加えて画像の解釈も可能なため、データ分析だけでなく予測もできます。

Microsoft Power Platformにできないこと

ここまでMicrosoft Power Platformにできることを見てきましたので、できないことにも触れておきましょう。

  • 複雑なアプリ開発
  • 大規模なアプリ開発
  • 高度なセキュリティを求められるアプリ開発

アプリ開発やデータ分析といった業務効率化を実現するMicrosoft Power Platformですが、その一方で不得意な領域もあります。

ノーコード・ローコード開発はアプリ開発を簡単にするものの、その開発手法から複雑な開発や細かな調整が難しいといった特徴もあります。基本的には、社内向けの小規模から中規模なアプリ開発向けといっていいでしょう。高度なセキュリティが求められる開発にも向きません。

それでも、エンジニア不足などの理由から、ノーコード・ローコード開発の機運が高まってきつつあることは事実です。顧客ニーズの多様化や変化の激しさに迅速かつ柔軟に対応するためにも、アプリ開発の内製化は重要性を増していくことでしょう。

Microsoft Power Platformを導入するメリット

Microsoft Power Platformにできることとできないことを踏まえて、導入するメリットを見ていきましょう。ここでは、代表的なものを3つ取り上げます。

  • エンジニアでなくてもアプリ開発が可能
  • アプリ開発の内製化(開発スピードの向上やコストダウンなど)
  • 既存アプリやデータソースとの連携

エンジニアでなくてもアプリ開発が可能

Microsoft Power Platformなら、非エンジニアにもアプリ開発が可能です。ノーコード・ローコード開発のもっとも大きな特徴は、クリックやドラッグアンドドロップ、プルダウンからの選択といった簡単な操作で開発ができる点にあります。

プログラミングの知識やスキル、経験がなくても、用意されたパーツを組み合わせるような感覚で視覚的かつ直感的に開発ができることの意義は非常に大きいといえるでしょう。

日々業務に取り組み、やりづらさや改善点を感じている社員がアプリ開発できるとなれば、現場のニーズに的確に応えるアプリの開発が可能になるでしょう。

アプリ開発の内製化

ノーコード・ローコード開発は、システムやアプリ開発の内製化を可能にします。内製化のメリットは、次の3点だといえるでしょう。

  • 社内ニーズにフィットする開発が可能
  • 開発のスピードアップ
  • 開発にかかるコストの低減

日々の業務の困りごとなど、「細かいところで、実はこうしてほしいと思っていた」という声を拾っていけるのは、開発を内製化できるからこそだといえるでしょう。

外注を通さないことで、開発のスピードも向上します。ヒアリングから開発、使用感のフィードバック、改善というPDCAを回すスピードも上がりますので、アプリの品質向上につながる点も魅力です。

開発コストも削減できるでしょう。

既存システムやアプリ、データソースとの連携

社内の部署や機能によって導入しているシステムが異なる場合、データ連携ができず、データ収集や分析のためのデータを手作業で整えたり、表やグラフ化したりしているというケースがあります。

Microsoft Power Platformを導入することで、データ収集や整理、分析、レポート化をスピーディに実行できるでしょう。データの分断やサイロ化を解消し、データに基づいたスピーディな判断をする企業文化作りにも役立ちます。

デジタル人材の裾野を広げることの意味

ノーコード・ローコード開発は、アプリ開発に関わる人数を増やします。エンジニアのようなプロの開発側ではなく、ユーザーのように使う側でもなく、その間を行ったり来たりできる中間に位置する人材というイメージです。開発領域を本職とはしないものの、利用に留まらずできることを考え、簡単な手法で開発できる人材といってもいいでしょう。

そのような人材が増えることは、企業にとってプラスなのではないでしょうか。社内システムの刷新や新システムの導入時には、ユーザー目線でのニーズを開発者に届ける橋渡し役として貢献するでしょうし、万が一、デジタル・IT人材が不足しそうになった場合には、専門的な教育や研修を受講させ、業務に従事させられる可能性もあります。

供給が増えたものの需要の伸びに追い付かないIT・デジタル人材

日経クロステックによると、IT人材は2015~2020年の5年間で20万人以上増加したと報じています。しかし、IT企業が囲い込みをしがちだともしています。IT人材の多くがIT企業に流れるという構図の中で、優秀な人材を獲得する競争は激化しているといえるでしょう。

ノーコード・ローコード開発に関心が寄せられる理由のひとつは、間違いなくエンジニア不足です。ノーコード・ローコード開発の導入には、情報システム部との連携やアプリ開発のルール作りなどの課題がありますが、デジタル・IT人材不足の改善に役立つ選択肢のひとつであることに間違いはないでしょう。

まとめ

Microsoft Power Platformは、ノーコード・ローコードによるアプリ開発で業務自動化や効率化を図れる5つのアプリの総称です。ドラッグアンドドロップといった簡単な操作で、非エンジニアでも簡単にアプリ開発ができることを大きな特徴としています。

プログラミングの基本となるコーディングの知識があれば、より一層ニーズに応えるアプリ開発や修正が可能です。Office365を利用しているユーザーであれば、無料またはあまりコストをかけることなく利用できるという点やOffice系アプリ、Teamsとの連携も魅力だといえるでしょう。

次回以降は、Microsoft Power Platformの各アプリの詳細やアプリの内製化が求められる理由、導入事例・成功事例について取り上げていきます。

Microsoft Power Platform
https://www.microsoft.com/ja-jp/biz/dynamics/power-platform

この記事を書いた人

吉野竜司|Ryuzi Yoshino株式会社アイクラウド 代表取締役CEO

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