デジタルマーケティングの人材育成は難しい?失敗例から学ぶ課題とは

デジタルマーケティングの人材育成は難しい?失敗例から学ぶ課題とは

リスキリング支援を受けて、デジタルマーケティングの人材育成に関するお問い合わせが増えています。その一方で、人材育成が難しいというお声も数多く寄せられています。そこで今回は、デジタルマーケティングの人材不足という状況を踏まえ、人材育成にあたって、どのような課題があるのか失敗例を参考にしながら見ていきましょう。

デジタルマーケティングの人材不足という現状

弊社では度々、リスキリング支援コース(人材開発支援助成金)を取り上げています。そもそもデジタル人材全体が不足するという状況にあり、デジタルマーケティングの人材不足にも拍車がかかっています。いくつかの調査結果を見てみましょう。

デジタルマーケティングの人材不足を感じている企業が多い

2023年2月に実施された「デジタルマーケティング人材の採用実際調査」によると、デジタルマーケティング人材の採用に苦労しているという回答が半数を超え、53.6%に上りました。この調査は、デジタルマーケティング人材を採用している会社の経営者や役員を対象に194名から回答を得たものです。

2023年4月に発表された「マーケティング・プロモーションに関する企業アンケート調査」でも、デジタルマーケティングの課題は「専門的に行う部署・チームがいない」「DX人材がいない」という2つの回答がそれぞれに約40%を占めていました。こちらも経営者やマーケティング関係者への調査結果です。

また、国内の経営者約500名から回答を得た「国内企業のデジタルマーケティング実態調査 2023年・2024年」という調査では、デジタルマーケティング推進の課題として、「デジタルマーケティングに精通した人材がいない」という回答が18.5%で上位に入っていました。

ここに挙げた調査結果はいずれも、デジタルマーケティングを実施している会社の経営者や役員、マーケティング関係者などを対象にしたものです。デジタルマーケティングに取り組んでいる会社ほど、人材不足を実感しているといっていいでしょう。

デジタルマーケティングの中でよく実施されている施策

デジタルマーケティングの範囲は広いです。SNSやWeb、動画、スマートフォン・タブレットといったモバイルデバイスのアプリ、メール、自社に蓄積されている顧客情報、IoT、ビッグデータなど、対象とするものは多岐にわたります。

前出の3つ調査によると、デジタルマーケティングの中で現在取り組まれているのは、Web広告を含むデジタル広告やSNSマーケティング、動画マーケティングです。このほかに、Webサイトの構築・リニューアルやメールマーケティング、SEOなども挙がっています。

その一方で、人手不足などの理由から取り組めておらず、今後取り組みたいとしているものも、実はほぼ同様だという結果が出ています。次いで、顧客管理や営業支援などが入ってくるものの大きく変わりはしないという印象です。

このことが意味しているのは、Web広告やSNS・動画マーケティング、Webサイトリニューアルなどの需要が大きく、人手不足感も高いということでしょう。優秀な人材は、どの会社からも求められ、人材市場で優位に立っているといえます。

必要な人材を育成する難しさ

このような状況で、デジタルマーケティングの即戦力を採用しようとすれば、人材獲得競争に勝たなければなりません。そうなってくると、採用と同時平行でデジタルマーケティング人材の育成に取り組もうと考えるのが自然な流れです。

しかし、スキルや能力の高い人材は、そう簡単に育成できません。そのような人材というのは、研修はもちろんのこと、実践のための時間を費やしているだけではなく、業務での成功や失敗を積み重ねながら成長してきた結果だからです。

会社側のご要望として、「短期間で育成したい」「できるだけ早く教育コストを回収したい」「人材育成の効果が見えにくい」といったお声をいただくのは、決して珍しいことではありません。会社には会社のルールや仕組みがあります。

そこで次に、デジタルマーケティング人材を育成するにあたって、どのような課題があるのかを見ていくことにしましょう。

デジタルマーケティングの人材育成上の課題

デジタルマーケティングの人材不足を感じてはいるものの、なかなか育成が進んでいないという現実が見えてきたのではないでしょうか。そこで、ここでは、デジタルマーケティングの人材育成にあたり、どのような課題があるかを失敗例から考えてみましょう。

  • スキルセットが不明確
  • 研修内容の見極めができない
  • 研修後の人材活用体制の不備
  • 研修効果の測定が難しい
  • 中長期的な人材育成という視点の欠如

スキルセットが不明確

スキルセットというのは、どのようなスキルや能力、経験があってほしいかを明示するものです。業務に対してジョブディスクリプション(職務記述書)があるように、スキルに対してはスキルセットがあります。

このスキルセットが不明確なまま人材育成を始めてしまうというのが、よくある失敗例です。デジタルマーケティングに対する理解が不足していると、どのようなスキルセットが必要か、あると望ましいかなどがわからないということになりかねません。

スキルセットを明確にするのが難しい理由として、以下のものが挙げられます。

  • 実践的な経験に乏しい
  • 経営者や社内の理解不足
  • 外部の専門家との連携不足

初めてデジタルマーケティングに取り組もうとしている、または取り組み始めたばかりという会社の場合、実力不足や実践的な経験に乏しいことから、スキルセットを明らかにするのが難航しがちです。

経営者や役員、社内のデジタルマーケティングに対する理解不足もひとつの要因です。デジタルマーケティングが全社に影響を与える業務だということや、自分の部署ではどのような業務を任せたいのかまで考えが及んでいない場合があります。

そのような状況で、自社のリソースだけでスキルセットを明確にするには、かえって時間や労力がかかる場合もあります。作業のスピードアップや精度を高めるためにも、外部の専門家の力を上手に借りましょう。

研修内容の見極めができない

費用を投じて実施する研修の内容が、自社に適しているかどうか見極めができないというのも、失敗の原因のひとつです。スキルセットのところでも触れましたが、経験が浅いほどどのような内容が自社に適しているかわからず、相手の提案を受け入れるしかなくなってしまう可能性があります。

研修や講座を選ぶ際には、以下の点を確認するようにしましょう。

  • 市場ニーズやトレンドを踏まえた内容になっているか
  • 実践重視の内容か(座学はもちろんのこと)
  • 振り返りや質問の時間が設けられているか
  • 講師の実績
  • 受講者数に対する講師やアシスタントの数
  • 受講者の学習進捗や結果が確認できるか(可視化されているか)

可能であれば、打ち合わせを重ねて自社に適したオリジナルのプログラムを組むほうが望ましいです。既存の講座を受ける場合には、デジタルマーケティングの基礎に加えて、トレンドのWeb広告やSNS・動画マーケティングや自社が求める内容をどれだけ多く含んでいるか確認しましょう。

研修後の人材活用体制の不備

研修後の人材活用体制が整っていないことも、デジタルマーケティングの人材育成が失敗する理由のひとつです。研修や講座を受講させてみたものの、通常業務に時間を取られてなかなかデジタルマーケティングに取り組めないというお話もお聞きします。

もともと社内にデジタルマーケティングの専任(兼任)担当者がいないと、研修を受けた人材が手探りで実践していくことになるでしょう。また、新たな業務やポジション、プロジェクトといったスキルを活用できる場が設けられていなければ、せっかくの研修が無駄になってしまいかねません。

デジタルマーケティングを社内に根づかせたい、今後もっと有用さが増していくスキルだと理解してほしいということであれば、研修後の体制も整えておくことをおすすめします。

研修効果の測定が難しい

デジタルマーケティングは、研修効果の測定が難しいとされています。商品やサービスの売上高が増加したなどように、数値化できるもので効果を測定をするのがもっともわかりやすいですが、そのような結果が出るまでには時間がかかるのが一般的です。

売上高に数字として表れる前に、ウェブサイトやアプリ内コンテンツなどへのアクセス数や広告のクリック率、エンゲージメント、コンバージョン率、獲得したリード数など、施策そのものの効果測定をする方法や指標はたくさんあります。しかし、それがどれほど研修によるものなのかを明らかにするのが難しいとされている理由です。

それに加えて、研修を実施したものの、そもそもどのように研修効果を測定したらいいかわからない、その後を追う労力に余裕がない、研修以外の外的要因が大きく影響していた可能性があるなど、効果測定を複雑にする要因もあります。

複雑な効果測定に割く人的リソースがない場合には、資格などわかりやすい結果を残すことで実績をアピールするという考え方もあります。

中長期的な人材育成という視点の欠如

冒頭でも取り上げた中長期的な人材育成という視点の欠如は、デジタルマーケティングに限らず、あらゆる人材育成の失敗に共通していることでもあります。企業研修である以上、投資対効果を求めるのは当然のことです。しかし、近年は特に成果を急ぐ傾向が強まっているように感じます。

本記事の中でも何度か触れていますが、人材育成には時間が必要です。短期的な成果を求めすぎてしまうと、中長期的な人材育成がおろそかになってしまいかねません。知識やスキルは比較的容易に習得できますが、それを活用する能力は、色々な場面での実践を通して少しずつ培かわれていくものだからです。

また、マーケターに必要な幅広い知識やスキルを長期的に身につけさせるという総合的な教育計画を持っている会社もそう多くはいないと感じます。今すぐ役立つデジタルツールのスキルはもちろんのこと、トレンドに対する感度や分析力、論理的思考力、問題解決力、顧客のニーズを引き出すコミュニケーション力といった能力の育成も、優秀なマーケターの育成には欠かせません。

まとめ

よくある失敗例から、デジタルマーケティングの人材育成上の課題を見てきました。特に初めてデジタルマーケティングに取り組んだり、これから注力したいと考えたりしている会社にとって、研修会社選びは重要です。ともに課題を解決するという姿勢を持ち、パートナーとして歩んでいける研修会社を選びましょう。

弊社では、デジタルマーケティングに取り組みたいが何をしていいかわからないという会社から、デジタルマーケティングに精通した人材を育成したいというご要望まで、幅広い対応が可能です。オーダーメード研修にも内容が定まっているオープン研修にも対応しています。

弊社のデジタルマーケティング研修では、総合的かつ実践的な内容の学習が可能です。優れた講師陣の指導の下、デジタルマーケティングの人材育成を成功させ、ぜひこれからの時代を生き抜くための武器としてください。

この記事を書いた人

吉野竜司|Ryuzi Yoshino株式会社アイクラウド 代表取締役CEO

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